今回は甲状腺の治療についてご紹介させていただきます。
直接、甲状腺の亢進や低下を治してほしいという依頼は少ないと思いますが付随する症状に肩こりやのぼせ、倦怠感などがあるのでご相談に来る方はおられると思いますので覚えておいてほしいご症状です。
【甲状腺機能亢進症・低下症】
現代医学的な分類としては以下になります。
基礎知識としては覚えておいた方がいいでしょう。
①甲状腺機能亢進症⇒血液中の甲状腺ホルモンが多すぎる病気
(バセドウ病、無痛性甲状腺炎、亜急性甲状腺炎、甲状腺機能結節、妊娠性甲状腺機能亢進症、他)
②甲状腺機能低下症⇒血液中の甲状腺ホルモンが少なすぎる病気
(橋本病、粘液水腫、他)
③結節性甲状腺腫⇒甲状腺の臓器内に腫瘤ができる病気
(濾胞腺腫、腺腫様甲状腺腫、甲状腺悪性腫瘍、他)
妊娠中や産後に異常が発見される方が最近増えています。
産後のうつ症状や産後の疲労を強く訴えう方の場合は注意しておく必要があります。
病院では
手術や薬物療法を行います。
①甲状腺機能に対する治療
甲状腺ホルモンの補充のためサイロキシン(チラーヂンSR)を服用
脳下垂体から分泌される、文字通り甲状腺を刺激するホルモンTSHの服用
放射線性ヨウ素内用療法(アイソトープ療法)
PEITは穿刺吸引細胞診とエタノール注入療法
正直、これといった改善策がないのが現状で生涯服用を続けている方も少なくありません。
◎甲状腺の異常に伴う症状について
①肩や首のコリを伴う筋肉特に上半身の異常緊張
機能亢進、低下に関わらず、体の筋肉の緊張状態が見られます。
胸郭や首回りの緊張が高まり、呼吸が浅くなりますので
『夜寝てても痛みで目が覚める』
などのご症状を訴える方もおられます。
②喉の違和感
食事中やその他の時間帯に喉に違和感を覚えます。
気管や食道を圧迫している場合もありますので注意が必要です。
③倦怠感・体のだるさ
やる気が出ない・とにかくしんどいというような方が少なくありません。
④安静時の汗、寝汗など
安静時にも汗をかいたり、冬でも寝汗がひどいなどと訴える方も見られます。
症状については他にもありますのでそれだけでは判別は難しいことも覚えておいていただきたいことの一つです。
【東洋医学的なアプローチ】
甲状腺は喉にあります。
この部を流れる経絡である『胃経』『大腸』『三焦』『小腸』『胆経』『膀胱』に着目します。
ここで確認しておきたいのはすべて『陽経』であるということです。
ですので適切に対応すれば、命に別状はありません。
充分に適応疾患になるとお考え下さい。
◎証
腎虚もしくは肺虚で関連して、『脾』の虚実がポイントになります。
自分では気づかない場合が多いので長く患っていて色んな訴えがある場合は腎虚でいいでしょう。
その後に肺虚に移り、ケアしていくことになります。
花粉症や皮膚炎などのアレルギー性の症状が見られる場合が多く、このような場合は相当な時間を要します。
◎治療
①関連する経絡に処置を行います。
②肩甲骨の周辺を緩める
肩甲骨の外周縁にコリが見られます。痛みがきつい場合がありますので配慮しながらお願いします。
肩甲骨自体が可動域制限されていますのでここが緩むだけでも様々な症状の改善になります。
③『三焦経』の反応を見る
ホルモン系の異常には必ず『三焦経』を使います。
これは臓腑でない部分のいわゆる『隙間』の異常なのでこれを支配するのが三焦経になります。
多くの場合は『瀉法』でいいと思います。
衰弱している場合は補いますが治療院には来ないと思います。
④肋骨を緩めます。
呼吸が楽になります。
⑤その他の主訴等にアプローチします。
いきなり主訴に対して、アプローチしてもホルモン系のご症状の場合は改善されませんので最後に行います。
◎養生
胃や腸の養生が大切です。
一般的には月並みではありますが
①空腹を感じてから食べる
②精製糖や乳製品の制限
③穀物(精製されていない)を少量でいいのでよく噛んで食べる
④タンパク質の摂取を心がける
などが挙げられます。
食事の内容や生活習慣が乱れている方がほとんどですのでホルモン系の養生はとても大切です。
焦らずにゆっくりと指導を繰り返すことも大切にしてください。
腎と肺、脾が関係しているので
『恐れ、悲しみ、思い憂う』
などの症状が複雑な方が多いのでしっかりと説明して、ゆっくりと取り組むべき症状であることを伝える必要があります。
以上です。